日本顕微鏡歯科学会 2020年 ウィンターセミナーweb AMED日本語版

2020年12月6日、JAMDウィンターセミナーがwebで開催されました。
今回のセミナーは10月に米国シカゴで開催されたAMEDにおいて、英語で発表された吉田格先生、宮島大地先生のお二人に英語での発表を日本語でご講演頂きました。

当日歯科医師・衛生士で150名を越える参加者が視聴される中、三橋純会長のご挨拶を皮切りに始まりました。
渉外広報担当理事である三橋晃先生司会の元、第一演者は今年認定指導医を取得された宮島大地先生から講演がスタートしました。

『マイクロスコープによる診断と治療で抜歯宣告された歯を救う』という演題とおり、他院にて"抜歯"と診断された患者に対し、診査・診断から歯内療法・補綴治療に至るまで一貫してマイクロスコープを使用した、豊富な知識と正確性の高い技術を実地し、歯の保存へ繋がった症例が提示されました。宮島先生の症例は日本のGPのレベルの高さを世界に示してくれたのではないでしょうか。
症例に引き続き、「英語力ゼロからの海外への挑戦」「マイクロネイティブがもたらす臨床効果」についても話していただきました。
宮島先生のAMEDまでの軌跡は「英語力ゼロからの海外への挑戦」ということで、「英語は苦手だ」「英語にコンプレックスを感じている」という歯科医師へ大きな希望を与え、新しい道を切り開いてくれたと思います。
私のように英語に対し苦手意識を持つ歯科医師でも「海外に挑戦してみたい!」とモチベーションを上げてもらえるそんなプレゼンテーションでした。日々の臨床に追われる中で、わずか半年でアジア顕微鏡歯科会議(APM)に挑戦、そこからまた2年間海外のセミナーに積極的に参加し、努力し続けた宮島先生にとても感銘を受けました。
そして「マイクロネイティブがもたらす臨床効果」についても非常に共感を得ました。

マイクロスコープのメリットの一つとして、録画した"映像"を患者に見せることで情報共有できるという点が挙げられますが、宮島先生の歯科医院では"映像"を教育の場面にも使用されていました。常により高い治療を行うためには知識・技術の向上は不可欠です。宮島先生の医院のように、治療の映像を知識・技術を向上させるためのツールとして活用し、成果を上げていくべきだと思います。

そして最後の「子供たちの夢を歯医者さんにするために」では宮島先生の熱い思いが伝わってきました。思いを抱くことはできたとしても、その思いを映像化し、世に発信することは誰もができることではありません。「さすがです」という一言につきます。今の子供達が歯科医師になりたいと思うように、私達歯科医師が見せていかなければいけないと改めて感じました。

第二演者は認定指導医・副会長をされている吉田格先生でした。演題は「顕微鏡治療のその先へ インプラントトラブル症例から考える」。顕微鏡の有用性について語られることは多くありますが、「顕微鏡治療のその先」について、皆さんはどのように考えますか?吉田先生が顕微鏡からインプラントトラブル症例を見て何を考えたらよいのかを解説した大変貴重な講演でした。

まずはインプラントトラブル症例を提示し、それを解説しています。歯科医師なら誰もが一度は通るであろう、スクリューの破折でしたが、吉田先生は顕微鏡を用いて、見事に安全に、正確に、非侵襲的に破折したスクリューの撤去を見事に行なっていました。続いての症例はインプラント周囲炎でした。まずは衛生士がマイクロスコープも用いて排膿を見逃さず、記録しているところから始まります。その後、治療法としてマイクロスコープ下でオープンフラップデブライトメントを選択、その中でも特に圧巻であったのがブラインドになってしまう舌側のデブライトメントです。頬側に比べ難易度の高い舌側に関してもミラービューで見事に行なっていました。
最後には自家骨を採取しリカバリーしていました。

吉田先生が提示されたインプラントトラブル症例を通し、顕微鏡の有用性は十分理解できましたが、今回はそれだけでは終わらず、またここから更に興味深い内容へと話は進んでいきました。
テーマは「顕微鏡治療のその先」。吉田先生は「顕微鏡から考えるチャンスをもらった」と言っていました。顕微鏡を使用したから全ての処置がクリアできるわけではありません。だからこそ顕微鏡を使えるようになることに満足するのではなく「その先」を考える必要ということです。経験豊富で顕微鏡のスペシャリストの吉田先生だからこそ「顕微鏡治療のその先」について考えると言う言葉に重みがあり、吉田先生の臨床に対する診療姿勢にはただただ頭が下がる思いでした。

患者に質の高い顕微鏡治療を提供することはもちろん重要なことです。患者さんに何を食べて欲しいか、今後どのような人生を歩んで欲しいのか、治療後のその先まで考えて治療しなければいけないと改めて痛感させられました。

今回のシーズンセミナーはweb開催だったからこそ、日本全国から多くの歯科医師・衛生士が参加することができたのではないでしょうか。
演者の吉田格先生、宮地大地先生は顕微鏡を最大限に活用した日本の歯科医としての仕事の素晴らしさを世界に示してくれました。聴いている方は、新たな知識を得ることができ、多くの刺激受けることができた、そんな充実した内容のシーズンセミナーとなりました。
最後にこのような素晴らしいセミナーを開催してくださった、会場設営、協賛企業、実行委員の先生方々に、感謝申し上げます。

(文責:鎌倉デンタルクリニック 関口寛人)

 


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